レバノンの食卓にピスタチオは欠かせません。家にお客様を招く日、食前酒と共にまずお出しするのがピスタチオです。子供も大人と一緒になってちょこんと座り、硬い殻を一生懸命開けてはピスタチオを頬張るんです。大人になった今でも、こうした光景を懐かしく思い出します。
料理に使う時は、主に最後の仕上げとして華を添える食材です。ピスタチオ、アーモンド、そして松の実を砕いて混ぜたものは「ルーべ(ハートの意)」という愛らしい名前がついていて、これは米料理や肉料理にも用います。カリカリとした食感と新緑のような爽やかな香りが身上です。
また、ピスタチオなしにはレバノンスイーツは考えられません。ほぼすべてのデザートにピスタチオが入っています。アイスクリームにはピスタチオのクランチを振りますし、「バクラヴァ」という、木の実を薄いパートフィロ生地で巻いたお菓子も、ピスタチオバージョンが最も上等とされています。「マアムール」という復活祭のソフトクッキーはピスタチオ入りの餡が特徴ですし、ピスタチオとバラの花びらの組み合わせはレバノンスイーツの香りの基本も言えるでしょう。
ピスタチオに始まり、ピスタチオに終わる食。時には、デザートの後、お茶うけとして再びピスタチオを楽しむこともあります。
夏の終わりになると、レバノンの市場には収穫したてのピスタチオが並びます。旬はそれほど長くなく、9月末頃までのおよそ三週間。生のピスタチオをご覧になったことはありますか? なんといっても香りが印象的です。実を包むような薄皮があり、さらに殻にも外皮があります。これが少ししなびると乾いた葉のような独特の香りを漂わせます。生のピスタチオは殻を剥くのが難しいのですが、実はもっちりとした食感があり、乾燥ピスタチオよりも甘みのある香りです。噛むとその香りが鼻に抜けていくような特別な感覚に包まれます。

決め手はピスタチオ。
レバノン風デザートに着想を得た
香水のエレガンス
― ユヌピスターシュ

#01
OBVIOUS / UNE PISTACHE
PARIS
PARIS
2025.03.01

Interview
シェフのカリム・ハイダール氏
フランスのエスプリを香りで表現する香水ブランド「オブヴィアス」。優雅でありながら、思わず笑顔を誘われるような個性派が揃います。そんな中から、今回は「ユヌピスターシュ」という香りをご紹介。「ピスターシュ」とはフランス語でピスタチオを意味します。スイーツや料理の食材としてお馴染みの存在ですが、「オブヴィアス」ではレバノンの定番デザート「ムハラビーエ」に着想を得て、この香水を創造しました。
アラブの伝説の名将が愛したことから彼の名がつけられたという逸話を持つデザート、「ムハラビーエ」。オレンジの花とアーモンドによるなめらかな味わいは例えて言うなら“中東のミルクプリン”。そして食感の決め手となっているのがピスタチオです。パリでレバノン料理店「SAMA/サマ」を営むカリム・ハイダールシェフに、このお菓子について話を伺いました。
レバノンは日本からは遠い国ですが、自然に恵まれ、ナッツやスパイスを多用する独特な食文化が根付く場所。シェフ自身、「ピスタチオは人生の必需品」と語るほどです。そして「ユヌピスターシュ」の香りを初めて試した時は、「これはピスタチオというより、ムハラビーエそのものだ!」と驚嘆したといいます。
アラブの伝説の名将が愛したことから彼の名がつけられたという逸話を持つデザート、「ムハラビーエ」。オレンジの花とアーモンドによるなめらかな味わいは例えて言うなら“中東のミルクプリン”。そして食感の決め手となっているのがピスタチオです。パリでレバノン料理店「SAMA/サマ」を営むカリム・ハイダールシェフに、このお菓子について話を伺いました。
レバノンは日本からは遠い国ですが、自然に恵まれ、ナッツやスパイスを多用する独特な食文化が根付く場所。シェフ自身、「ピスタチオは人生の必需品」と語るほどです。そして「ユヌピスターシュ」の香りを初めて試した時は、「これはピスタチオというより、ムハラビーエそのものだ!」と驚嘆したといいます。


ピスタチオに始まり、
ピスタチオに終わるレバノン料理


多彩な香りと色彩は、
シェフとしての原点
この香水は「ムハラビーエ」に着想して誕生したそうですが、他にも「アスマリーエ」「アターイエフ」といった、レバノンの代表的なお菓子は、いずれもミルクやクリーム、オレンジブロッサムウォーター、レモン、ハチミツ、ピスタチオ、時にローズウォーターやバラの花びら、を使います。色彩も重要ですね。ミルクやクリームの乳白色にピスタチオのグリーン、バラのピンク、柑橘類のオレンジがレバノンデザートの代表的な色彩です。
料理人にとって香りは重要です。味と同様、シェフ人生の核をなすのが香りといってもいいくらい。料理人であれば、料理の匂いを嗅げば美味しいかどうか、味付けの具合までわかってしまう、そういうものなんです。
仕事以外の場では、もう少し叙情的に香りを捉えているかもしれません。例えば、私はジャスミンの香りも好きですが、この香りを嗅ぐと祖父母の家の門を思い出します。満開の季節、夜になるとそこには素晴らしい芳香が漂っていて、思い出すと一気に時が遡るような感覚を覚えます。
好きな香りは他にもあって、例えば愛する女性の香りや家族の香りも、私には宝物です。二人目の子供が2歳になった時、赤ん坊特有の香りを胸いっぱいに吸い込みながら「あぁ、この匂いを味わえるのも今のうちだなぁ、子供はすぐに大きくなるから」と感じ、同時に自分の父親としての人生が次のステージに移りつつあることを意識して感慨にふけったことを覚えています。
レバノン料理を大切に思うシェフとして、そして愛する家族のいる人間として、好ましい香りも愛する香りも様々です。香りが教えてくれることを大切にしたいと心から思います。
料理人にとって香りは重要です。味と同様、シェフ人生の核をなすのが香りといってもいいくらい。料理人であれば、料理の匂いを嗅げば美味しいかどうか、味付けの具合までわかってしまう、そういうものなんです。
仕事以外の場では、もう少し叙情的に香りを捉えているかもしれません。例えば、私はジャスミンの香りも好きですが、この香りを嗅ぐと祖父母の家の門を思い出します。満開の季節、夜になるとそこには素晴らしい芳香が漂っていて、思い出すと一気に時が遡るような感覚を覚えます。
好きな香りは他にもあって、例えば愛する女性の香りや家族の香りも、私には宝物です。二人目の子供が2歳になった時、赤ん坊特有の香りを胸いっぱいに吸い込みながら「あぁ、この匂いを味わえるのも今のうちだなぁ、子供はすぐに大きくなるから」と感じ、同時に自分の父親としての人生が次のステージに移りつつあることを意識して感慨にふけったことを覚えています。
レバノン料理を大切に思うシェフとして、そして愛する家族のいる人間として、好ましい香りも愛する香りも様々です。香りが教えてくれることを大切にしたいと心から思います。

Shop
SAMA サマ
住所:5, rue Guillaume Bertrand, 75011 Paris
Tel:01 73 79 87 90
営:12:00〜14:30、19:30〜22:30(火曜から土曜日まで)
日曜:12:00〜15:00
休:月曜
Web:https://samabistro.com
Instagram:@sama.bistro
Tel:01 73 79 87 90
営:12:00〜14:30、19:30〜22:30(火曜から土曜日まで)
日曜:12:00〜15:00
休:月曜
Web:https://samabistro.com
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カリム・ハイダールシェフによるムハラビーエのレシピ
材料
6人分
牛乳 | 1ℓ |
---|---|
生クリーム(乳脂肪分35%) | 250ml |
ピスタチオ | 50g |
食用ローズウォーター | 大さじ2 |
コーンスターチ(米粉でも可) | 75g |
砂糖 | 50g |
作り方
下準備
鍋に湯を沸かしてピスタチオを入れ、浮いてくる薄皮やゴミなどを取り除いてから冷水に浸け、そのまま冷水ごと冷蔵庫で保存する。
鍋に湯を沸かしてピスタチオを入れ、浮いてくる薄皮やゴミなどを取り除いてから冷水に浸け、そのまま冷水ごと冷蔵庫で保存する。
- 1鍋に牛乳を入れて火にかけ、かき混ぜながら沸騰させる。
- 2コーンスターチを少量の水で溶いて1の鍋に加え、さらにかき混ぜる。
- 32にローズウォーター、生クリーム、砂糖を加えて混ぜたら火を止める。
- 4丸い型に3を流し入れ、粗熱が取れたら冷蔵庫に移し、そのまま冷やし固める。
- 5固まったムハラビーエを型から抜いて出し、皿に盛りつける。準備しておいたピスタチオを粗く砕いて上にかける。




Photo: SAMA©
Interview/Translation: RYOKO SEKIGUCHI
Text/Rewrite: MAYUKO YAMAGUCHI
Interview/Translation: RYOKO SEKIGUCHI
Text/Rewrite: MAYUKO YAMAGUCHI