クロワッサンについて話せと言われたら、それはつまり僕にとってはバターを語ることになりますね。とても重要なんです。いや、重要を通り越していますね。クロワッサンは香りと食感がすべてです。そして、香りとはバター、食感の心地良さを印象付けるのが生地の層なのかなと思います。
クロワッサンだけでなく、うちの店で出しているすべてのお菓子やパンについて言えることですが、昔から大切にしている共通項があります。それは「余韻」を持たせること。わかりやすい例を挙げるなら、フルーツでしょうか。
「フランスで現地の果物を食べてみたらびっくりするくらい酸っぱかった」という経験をされた方は多いと思います。対して日本の果物とはといえば甘くて、そのままでも本当においしい。生食するには良いのですが、僕がお菓子やパンに用いるのは、クセがあったり酸っぱくてそのままでは食べにくかったりというフルーツばかり。なぜかというと、そういうものの方が香り高いことが多いからです。甘さは砂糖などで補えるし、酸っぱさや苦味は、いろんな食材を合わせることで調和されて別のおいしさに変わります。ただ、香りを後から補うことはできない。人口の香りを使うのは気が進みませんしね。
そして、風味や香り、苦味といった要素って、ケーキやパンを食べ終わった後にもこのあたり(と言って眉間から鼻のあたりを指差す大山さん)に漂っていたりすると思いませんか? これが「余韻」なんです。お菓子がなくなった後も、歴然とした存在感として残っている。これがなければ、ケーキなんてただの甘い食べ物ですよ。感動したり心をときめかせたりするようなものにはなり得ないと思います。

見えなくても感じる存在感。
香りって余韻そのものですよね
― クロワッサンカフェ

#04
versatile paris / croissant Café
TOKYO
TOKYO
2025.07.18

Interview
パティシエの大山恵介氏
香水ってどんな時につけますか? 「特別な瞬間、自分を鼓舞するために」という人もいれば、「日常に添える小さな楽しみ」という人もいるでしょう。
2021年にパリで生まれた「ヴェルサティル パリ」の香りは、どちらかといえば後者に当てはまるかもしれません。好奇心旺盛なパリジェンヌ、コラリー・フレブールが生み出す香りは、日常生活からインスパイアされたものばかり。「二日酔いの日に」、「だらだらする日曜日に」、「アペロの時間に」など、これまでの香水にはなかったシーン設定やインスピレーション源がユニークかつ大胆で、それでも肌にのせればすっとそのまま暮らしに溶け込んでしまう不思議な魅力にあふれています。
今回ご紹介する香りは“プティ・デジュネ”がテーマ。そう、パリの朝食風景にインスパイアされて生まれた香水で、その名を「クロワッサンカフェ」といいます。コーヒーやカプチーノのニュアンスの奥でリッチな存在感を発しているのは、バターたっぷりのクロワッサン! 優しい陽の光や爽やかな朝の風を想起しながらこの香りを聴くだけで、幸せな気持ちが胸いっぱいに広がります。
クロワッサンに秘められた香りがいかに大切か、東京・兜町で「Bakery bank」をプロデュースするパティシエの大山恵介さんに語っていただきました。
2021年にパリで生まれた「ヴェルサティル パリ」の香りは、どちらかといえば後者に当てはまるかもしれません。好奇心旺盛なパリジェンヌ、コラリー・フレブールが生み出す香りは、日常生活からインスパイアされたものばかり。「二日酔いの日に」、「だらだらする日曜日に」、「アペロの時間に」など、これまでの香水にはなかったシーン設定やインスピレーション源がユニークかつ大胆で、それでも肌にのせればすっとそのまま暮らしに溶け込んでしまう不思議な魅力にあふれています。
今回ご紹介する香りは“プティ・デジュネ”がテーマ。そう、パリの朝食風景にインスパイアされて生まれた香水で、その名を「クロワッサンカフェ」といいます。コーヒーやカプチーノのニュアンスの奥でリッチな存在感を発しているのは、バターたっぷりのクロワッサン! 優しい陽の光や爽やかな朝の風を想起しながらこの香りを聴くだけで、幸せな気持ちが胸いっぱいに広がります。
クロワッサンに秘められた香りがいかに大切か、東京・兜町で「Bakery bank」をプロデュースするパティシエの大山恵介さんに語っていただきました。


余韻を感じさせるスイーツを
作ることが使命です


平凡な暮らしの中に気づかなかった香りがある
クロワッサンに話を戻すと、この余韻を与えてくれるものがバターなんじゃないかな。うちで使っているバターは、某乳業会社と協力して作り上げたオリジナルなんです。他には卸していない完全オリジナル品なんですよ、いいでしょう。笑 何が違うかというと、ただの発酵バターじゃないんです。丁寧に発酵させた後にさらに1ヶ月ほどの熟成を加えて作る「熟成発酵バター」です。熟成をかけることで、海外の高級バターに負けない香り高いバターが国産で生み出せるようになりました。
このバターを使って作るのがクロワッサンです。いや、クロワッサンだけではなくうちの商品すべてにこのバターを使っているのですが、クロワッサン生地には絶大な効果をもたらします。クロワッサンの生地って、これ以外にもザマンドやクイニーアマンなど活躍範囲が広いんです。クロワッサンを焼くときは生地の伸ばし方と折り方にもルールがあって、うちは四つ折りを2回です。三つ折りを3回にしたいなとかいろいろ他にも考えはありましたが、難しいんですよ、クロワッサン。バリバリっとした食感の皮ともっちりした中身の生地、さらに香り立つくらいにバターの風味を生かそうと思ったら焼きすぎるとダメだし、数え切れないくらいたくさん実験を繰り返して今の形に落ち着きました。
極上のバターが香る焼き立てのクロワッサンとコーヒー。どこにでもある平凡な組合せながら、どんな工夫や思いが詰まっているかを想像しながら食してみると、案外違いが見えてくると思います。
今も記憶に残る印象的な香りといえば、以前、京都の清水寺を訪れた日の空気を思い出します。何度も通っている場所なんですけどね。その日は朝、とても早く訪れたところ人の気配がまったくなくて、濃厚で荘厳な香りにあふれていました。そしてそれは、昼間だと気づくことのなかった香りでもありました。あれこそまさに、余韻の香りそのものだと思います。
このバターを使って作るのがクロワッサンです。いや、クロワッサンだけではなくうちの商品すべてにこのバターを使っているのですが、クロワッサン生地には絶大な効果をもたらします。クロワッサンの生地って、これ以外にもザマンドやクイニーアマンなど活躍範囲が広いんです。クロワッサンを焼くときは生地の伸ばし方と折り方にもルールがあって、うちは四つ折りを2回です。三つ折りを3回にしたいなとかいろいろ他にも考えはありましたが、難しいんですよ、クロワッサン。バリバリっとした食感の皮ともっちりした中身の生地、さらに香り立つくらいにバターの風味を生かそうと思ったら焼きすぎるとダメだし、数え切れないくらいたくさん実験を繰り返して今の形に落ち着きました。
極上のバターが香る焼き立てのクロワッサンとコーヒー。どこにでもある平凡な組合せながら、どんな工夫や思いが詰まっているかを想像しながら食してみると、案外違いが見えてくると思います。
今も記憶に残る印象的な香りといえば、以前、京都の清水寺を訪れた日の空気を思い出します。何度も通っている場所なんですけどね。その日は朝、とても早く訪れたところ人の気配がまったくなくて、濃厚で荘厳な香りにあふれていました。そしてそれは、昼間だと気づくことのなかった香りでもありました。あれこそまさに、余韻の香りそのものだと思います。

「Bakery bank」のいちばん人気でもあるクロワッサン。バターでも発酵バターでもなく完全オリジナルの「熟成発酵バター」を贅沢に用いて作られるシンプルな一品は、その場で食べずに持ち帰るのであればぜひともオーブントースターでのリベイクをおすすめします、と大山さん。ほどよくパリッとした皮と、みっちりした生地の食感に驚くしかない芳醇な生地。そして、食前から食べ終わった後もふんわりとあたりに漂うバターの香りに魅了される。肌寒い朝には、ミルクたっぷりのカフェオレにつけて食べるのもまた楽しい。
Shop
Bakery bank ベーカリーバンク
住所:東京都中央区日本橋兜町6-7 兜町第7平和ビル1F
Tel:050 3593 0834
営:8:00〜18:00
休:水曜
Web:https://bakery-bank.stores.jp
Instagram:@bank_bakery_tokyo
Tel:050 3593 0834
営:8:00〜18:00
休:水曜
Web:https://bakery-bank.stores.jp
Instagram:@bank_bakery_tokyo

Pâtisserie ease パティスリーイーズ
住所:東京都中央区日本橋兜町9-1 兜町第二平和ビル
Tel:03 6231 1681
営:11:00〜18:00(イートインL.O.17:00)
休:不定休
Web:https://patisserie-ease.com/
Instagram:@ease_tokyo
Tel:03 6231 1681
営:11:00〜18:00(イートインL.O.17:00)
休:不定休
Web:https://patisserie-ease.com/
Instagram:@ease_tokyo

プロフィール
大山恵介さん/製菓専門学校にて和菓子・洋菓子を専攻後、パティスリー「HIDEMI SUGINO」にてキャリアをスタート。レストラン等で経験を積んだ後、渡仏。帰国後は、銀座「アルジェントASO」、代官山「リストランテASO」(当時ミシュラン二つ星)にてデザートを担当。その後、福岡「リストランテASO天神」および新橋「レストラン ラフィネス」武蔵小杉「パティスト」千駄ヶ谷「レストラン シンシア」(ミシュラン一つ星)にて、シェフパティシエに就任。2018年、料理人コンペティション「RED U-35」にて、唯一のパティシエとしてシルバーエッグを獲得。2020年7月、日本橋兜町に「Pâtisserie ease」をオープン。同年9月には新宿伊勢丹にて「repos by Pâtisserie ease」をオープン。2021年11月、日本橋兜町にて、チョコレート&アイスクリームショップ「teal」をオープン。2022年12月には、ベーカリー「bank」、ビストロ「yen」、コーヒーバー&ショップ「coin」、フラワーショップ「fete」を備えた複合ショップ「BANK」を同じく日本橋兜町にオープン。2024年10月東京駅構内グランスタに「Brick bake bakers by Pâtisserie ease」をオープン。現在は店舗運営のほか、国内外でのコンサルティング・商品開発・講習会など幅広く活動している。



Photo: eat creator© /KEN SHIRAISHI
Text: MAYUKO YAMAGUCHI
Text: MAYUKO YAMAGUCHI